■同時廃止事件とは

同時廃止事件とは、差押禁止財産を除いて、換価容易な資産がほとんどなく、破産手続を進めても債権者への配当の可能性もない事件をいいます。 裁判所は破産開始決定をすると同時に破産手続を終了させる宣言(破産手続廃止決定)をするのですが、開始決定と同時に廃止決定をするので、「同時廃止」といいます。 破産管財事件の場合は、破産者にとっても、破産管財人との打ち合わせや債権者集会への出頭、郵便物が転送されるなどの負担がありますが、同時廃止事件の場合は、免責不許可事由が顕著でなければ、書類審査だけの簡易な手続きとなり、破産者の負担は軽くて済みます。 ただし、免責不許可事由がある場合は、同時廃止事件でも裁判所へ出頭しなくてはいけない場合があります。また、破産者自身が反省文や生活再建策を書いて提出することもあります。

■同時廃止と管財事件の振り分けについて

破産管財事件と同時廃止事件との手続選択については、一定の換価すべき財産が見込まれる場合は破産管財事件となります。すなわち、大阪地方裁判所では、同時廃止事件の申立書及びその添付書類において、①所持する現金及び普通預貯金の合計額が50万円を超えると認められる場合または現金等以外の12項目の個別財産(保険の解約返戻金、積立金等、賃借保証金・敷金の返戻金、貸付金・求償金等、退職金、不動産、自動車、上記以外の動産、上記以外の財産、近日中に取得することが見込まれる財産、過払金)について項目ごとの合計額が20万円以上となる項目がひとつでもあると認められる場合には、破産管財事件となります。 つまり、現預金の合計額が50万円までで、各個別財産の価値が20万円未満であれば、原則として同時廃止事件となります。各個別財産の価値が20万円未満であれば、現預金との合計で99万円を超えていても原則として同時廃止事件となりますが、総額が大きくなれば、管財人による資産調査が必要と判断されて、管財事件に移行する場合もあります。

同時廃止事件と破産管財事件との振分基準上は、実質的危機時期以降に個別財産を換価して(例えば生命保険を解約して解約金を受け取った場合など)破産手続開始の申立て時には現預金として所持していたとしても、換価前の個別財産とみなす運用とはなっていません。また、過払金についても同様に申立て時に過払金が回収済みである場合には、実質的危機時期以降に回収して現預金になったものであっても、あくまで現預金として取り扱うことになります。 このように個別財産を換価して現金化している場合は、単純に現預金としてみればよく、個別財産の20万円の枠内かどうかということを考慮する必要はなくなりました。